大人の知らない子どもだけの世界 その2
つかちゃんの家には、しょっちゅう遊びに行った。
初めて行った時、家の庭を見て、まずド肝を抜かれた。
まるでジャングルである。
植木鉢が所狭しと立ち並び、子どもの視界はすっかりさえぎられて玄関すら見えない。
「こっちから入って!」と叫ぶ、つかちゃんの声を頼りに裏手へ回ると、
家の壁際に巨大なガラス槽が見えた。
噂のカブト虫は、そこに眠っているらしかった。
ここでは何もかも、本格的であった。
僕は、わが家の軒下にある、30センチにも満たない、
ちっぽけな水槽のことをちらりと思った。
つかちゃんは、
「見る?」
というなり、柄の長いスコップで堆肥の山をほじくって見せた。
いた、いた。
白いカブト虫の幼虫が、ごろりと姿を見せた。
ぼくたちはのどを鳴らして、うめいた。
つかちゃんは、去年もいっぱいカブト虫を孵したらしい。
これなら、わざわざ取りに行かなくとも済むじゃないか、と思うのだが、
つかまえるのもやはり、つかちゃんの右に出るものはいなかった。
つかちゃんは夏休みになるときっちり成虫をつかまえて
ますますガラス槽をいっぱいにし、ぼくらをうらやましがらせた。