叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

教育実習に行ってないけど教師です




4月1日は、あたらしい先生方を職場に迎えての、歓迎会があった。
夜、駅前の通りを歩いて、指定の店。

宴会。
今の時期、大震災のさなかに行うのはどうか、という意見もあった。わが校長は、
「不安がうずまく今の世の中で、平常心で動くこともまた大事。平常心を失うから、買占めやら他を責める気持ちも生まれる。平常心の中で、粛々と子どもたちの大切な環境をつくっていく。そのための歓迎会なのだから、やるべし」と判断。

個人的には、本当によかった。その通りだ、と思っていたから。

さて、新しい先生方8人。(小規模校、12学級しかない学校で8人も先生が変わるってすごい規模だと思います)
自己紹介などいろいろと語り合っているうちに、

「○○小学校の教頭先生が、わたしの教育実習の時の先生でした」

という話題が出てきた。

それを聞きつつ、うらやましい気分。
私は、教育実習を受けていない

サラリーマンだったし、妻子がいたから、定職を離れるわけにはいかず、一か月も職場を離れることも無理で、教育実習なんて受けている余裕がなかったのだ
なんてったって、一か月会社休むって言ったら、

「じゃ、辞めてもらうしかないな」

と真顔で上司に言われたからね・・・。

いつもは冗談ばかり言い合うような人だったのに、あのときは真顔だったから、やっぱり無理なんだな、と観念しました。
大事な収入を途絶えさせるわけにはいかず、結局会社勤務を続行し、教育実習は受けない、とするしかなかったのです。


そこで、これも何度も体験済みのことですが、

新しくお見えになられた先生が、私に向かって、
「先生は、どちらで教育実習を受けられたのですか?」
とお尋ねになった。

となりでいっしょに聞いていた他の先生が、
「いえ、○○先生は(私のこと)、去年まで△△県にいらしたのですよ。だからこちらでは教育実習されてないですよね。ねえ、先生」

わたしは、ちょっと複雑な顔で言うしかなくなる。

「いえ~・・・、そうなんですけどねー。わたし、そもそも、教育実習を受けなかったんです」
というと、ちょっと一瞬、みんなの周りに不思議な空気が流れる。

「え?」
「なんでですか。受けなかったら教師になれないでしょう」

「えー、へへへ・・・」


ここから、私はどうやって、何を言おうか、本当に迷う。
笑ってごまかそうか、正直に転職の話をしようか、小学校教員資格認定試験のことを言おうか、どうやって言おうか・・・

しかしまあ、酒の席でなんとなく試験の話なんてのは、かたっくるしくていやな気もするので、ちょっと面白い顔をして笑いながら、

「いやあ~、受けないで教師になっちゃったんですよー!」

とか言ってごまかしたつもりになって、みなさんのグラスにビールを注ぎ、
「教育実習の先生が、隣の○○小の教頭先生になられているんですねえ。いいですなあ。縁がある、ということでしょうねえ」

こうしてなんとか凌いでいる。
グラスの中の泡が、ふっくらとビールのうまさを引き立てているようだ。
「お待たせしましたー、こちらでよろしいでしょうかー」
店の奥から、また別の料理が運ばれてきた。