叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

発達障害児でも叱るべきか




実は、この休みに入る直前の勤務日、相談されたのだ。
相手は、臨時任用の講師のSさん。
Sさんは、講師歴も6,7年ある、という方で、むしろ私なんかよりもよほどてきぱきと仕事をされている。
惜しいことに、旦那さんの勤務の関係で引越しが多く、正規の職員ではなく臨時任用をされているとのこと。


このSさんが、

「実は、迷っているんですよね」


と語りだした。

もう職員室には数人しか残っていない。

最初は、わたしとでなく、別の方と話をされていた。
1年生の不適応児童を専門に関わってくださっている先生と、いろいろと話をされていた。

ふだんなら、なにげなく帰ってしまうところだったのだが、どうやらなにか、深刻そうな気配。

「どうしたらいいのか・・・」

というつぶやきが、お二人の会話から聞こえてきたので、なんとなく

「まだお帰りじゃないんですよね。私はそろそろ帰ろうと思いますけど・・・」

と声をかけたら、冒頭のように、相談をされたのである。


まだ相談などしっかり受けられる自分ではないにしても、話を聞くだけ聞いてみよう、として座って話を聞いていると、こういうことであった。


実は、S先生がもたれているクラスの学級経営の方向が見えない、とのこと。
1年生対応の先生も、一昨年度によく関わった子がいる学年であり、子どもの顔や特長をご存じであった。そのため、おふたりで、これまでもいろいろと子どものことを相談なさっていたのだそうだ。


学級経営の方向とはどういうことか。

実は、かのS先生は、学年主任ではない。
学年のほとんどのことを、もう一人の主任先生にお伺いを立てて、すすめている。
最初に、この立場的な意味を理解したうえで、先を聞いた。

実は、主任先生のクラスにはグレーゾーンの子がおらず、ほとんどの子が、臨時任用のS先生のクラスにいる。
これは、前年度の先生が転出されていなくなったものの、学年はそのまま持ち上がりであったからだ。
前年度主任の先生のクラスをまかされたのが、臨時任用のS先生だった。
そのクラスに、グレーゾーンの子、また発達障害と思われる児童が複数いるのだ。

話の前提はここまで。


そして、S先生は、発達障害と思われる児童がたくさんいることから、クラス全体に以下のポイントを押さえて関わろうとしていた。

○基本的に叱らない
○言葉で注意するのでなく、子どものとる行動を変える手立てをとる
○できる限り、癒し系の教室にする


ところが、主任先生を始め、周りの先生たちは、

○もっと叱るべき

というのである。



もちろん、発達障害のことを考えて、あまり叱らない方がいいと考えている、と伝えた。
でも、そこで微妙に食い違う。

○あの子は、発達障害なんかではなく、ただ甘えているだけ


というのだ。

さらに、

発達障害の可能性があるにしても、いいことと悪いことを、明確にして行動を変えさせないとダメ

といったらしい。



S先生は、自分の見方に自信はない。
昨年から隣のクラスの先生として、いろいろと見て知っている先生たちがいるのだから。
その先生たちが

「あれは怠けだ」

というのに、

「怠けではなく、障害です」

と言いきるだけの自信はないのだ。



さらに、反抗挑戦性障害のようなタイプの男の子、石を投げたりなど、あぶなっかしくてとても心配な子がいる。
その子に対して、強くしかる、というのがどうなのか。

もちろん、暴力や怪我につながるような行為はやめさせなくてはならない。
でも、基本的に、

○もっと叱れ

というのは違う気がしている・・・、とのこと。




さあて、難問だ。
ここまで話をして、1時間半。
われわれを残して、みなさん帰宅された。
校内は職員室を残して真っ暗だ。


明日からはゴールデンウイーク、ゆっくり寝られそう。。。。と思った夜に、とかく、こうしたことがあるものだ。


わたしは、「障害があれば、叱ってもそのことの意味が正確に分からないのでは。叱らない、というので続ければいいのでは」

と意見を言った。

しかし、相手はすっきりしない。

他の子から、こう言われた、というのだ。


「なんで、先生は、Aくんのこと、叱らないのか」

他の先生なら、ぜったいに強く強く、叱ってくれた。
だから、Aくんも、少しはおさまっていた。
だけど、先生が変わって、あまりAくんを叱らなくなった。
だから、Aくんは調子にのっている。
わたしは、Aくんをしっかりと叱ってくれる先生がいい。

と言ったそうだ。


「なるほどねえ・・・」

ここからが、教師の腕の見せ所。
叱ってくれ、と言ってきた女の子も納得させながら、クラス全体にも相互理解の空気をつくりつつ、Aくんにも最適な対応をしていかなくてはならない。

さあて・・・