叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

いじめ発覚 連絡帳に本人と保護者の訴え その2




その後、白い紙を配り、

「なにが○○さんの心や気持ちを傷つけたと思うか、書きなさい」


とした。

○自分ではそのつもりがなくても、相手の心が傷ついてしまったら、いじめ。
○自分がどういう思いだったか、は関係ない。
○相手の心が、なにによって傷ついたか、書きなさい。


いじめた本人たちの筆が進まない。

いじめていない子(本人も、いい人たち、と呼んでいた子たち)の方がむしろ、泣きそうになりながら書いている。


それを集め、職員室へ持っていき、作戦を立てた。

同時に、いじめの張本人たちを5名、集める。
同時でなければ、情報交換があるので、それを避けるためだ。
一人で話した後、教室でワイワイと気楽に話をされてはたまらない。

5名の児童に対応する先生方の応援を依頼した。

1)教頭先生
2)1年の先生→6時間目なら空いている!
3)5年の先生
4)少人数加配の先生
5)わたし

これで対応可能だ。

次に、どの子とどの先生が話すかを決めて、表を作成、当人の書いた上記の紙とともに職員室の先生方の机上へ配布。すぐに動けるように手を打った。

さて、給食があり、昼休み。
ここまでの半日があっという間に感じる。


昼休みに1人のまじめな男子が、
「ぼくもいじめをしてしまった・・・」
とせつない顔をして告白に来た。
この子の言い分も聞いてやり、明日、どう自分がアクションを起こすか、決めさせて返した。

さらに、6時間目の先生方の行動について、該当の先生方に集まっていただいて口頭で説明。子どもたちから何を引き出すか、どこまで話したら終了にするかの目安を決めた。

さて、5時間目。
差別、という言葉を強調して、水俣の授業。
これは淡々と行った。
いわれのないことで苦しまなければならない身の切なさを、くりかえし、語った。
(ここで泣いていた子もいた。やんちゃなおふざけくんも、「今日の話はなんだかさびしい話だったなあ・・・」と独り言)


いよいよ、6時間目だ。

算数の自習プリントを配り、5名の名前を読み上げた。

「先生、なんでその5人なの?これから何するの?」

おしゃべりな一人がため口でいろいろと聞いてくるが、いつものように無視。

「先生は全体に話をしています。一対一でない。質問なら手をあげなさい」
これもいつも通り。今年になって100回以上繰り返したフレーズ。

5人は、なんとなく不安になって、廊下に集まってきた。

まだ、ぴんときていない子も。

「なにするの?」




「あなたたちの名前が、連絡帳に載っていたのです。
これから一対一で話をします。
Aさんは図工室で○先生、
Bさんは印刷室で○先生、
・・・・・・

すぐに行きなさい。
○○さんのことで話をしに来ました。お願いします、と言いなさい」


同時進行で、いじめた5人が、5人の教師と話をする。


教室を見ると、やけに静かに自習する子たち。


5人は呼ばれたのだ。


先生方には、
なにが○○さんを傷つけたのか、思い当たることをできるだけたくさん聞いてください、と伝えておいた。
明日からどうするか、というのは最後に少しだけ。
(明日からは仲よくします、なんていう、耳触りの良いきれいごとはあまり必要ない。言うだろうが。それよりも、自分の実態を、イヤになるほど見つめてほしい、ということ)

自分は人の心を傷つけたのだ、ということ。

このことを、大人の前で、ひとつひとつ、確認する作業をさせる。

「そうか。それが、○○さんの気持ちを傷つけたのだね。悲しい気持ちにさせてしまったのだね」

そうやって、ひとつひとつ、子どもが出してくることを、確認してください、と話した。
どの先生も、あとでそれを淡々としてくださった、と報告してくださった。


放課後、子どもたちが帰ってから、一人の親から電話があった。
娘が、友達をいじめてしまった、と告白してきた。
本当に申し訳ない、と。

ふるえる声で、その母親から電話があった。

電話口で頭を下げる親の姿を、娘は見ているだろう。
声をきいているだろう。
なによりも大事な、親の姿勢と、子に対する教育だと思う。
これをしなければ。


その後、いじめを受けた本人の家に報告に言った。
心配しないで、学校へおいでね、と伝えた。
笑ってくれた。
保護者の方も、御苦労さまでした。とねぎらいの言葉をかけてくださった。

帰りの車中は、少しだけ、心が上に向いた。