授業中におなかがいたいという子への指導
授業中、ここぞ、という場面にもかかわらず、
「せんせい!」
といきなり、だしぬけに言いだす子がいる。
べつに、場の雰囲気を読めない子、というわけでもないのだが、
なんだか1年生の時からの癖なのか、
身体に関連することは、ただちに先生に報告せよ、とでも親に言われているのか、
「おなかがいたいです」
と急に言い出す。
算数でも、国語でも、おかまいなし。
こちらが
「このタイミング、今のタイミングで、話の腰を折ってほしくない」
と思うときに、
「先生!おなかがいたいです!」
と言うのだ。
相手が高学年なら無視するか、今は授業中です、とでも言うのだが、相手は2年生。
うるうるした目で、体調不良をうったえる子を、あまり邪険にできない。
無視すると、
「せんせい、○○ちゃんが、おなかいたいって」
と、代弁してくれる親切な子もあらわれる。
それがまた、純真な親切心だから、これを無視するわけにはいかない。
今は授業中ですよ、というメッセージ、を送ってみたが、
なんだか教室中に、
「先生、○○ちゃんが、かわいそう・・・」
という空気が蔓延していたので、結局、話をきく羽目になった。
そこで、すぐに保健室へ行きたがったり、体調の不調を教師に訴えることで教師の注目を得ようとする子に向けて、次の手を打った。
名付けて、
「保健室レベルならOK、教室レベルなら、休み時間ね」作戦だ。
痛みが強く、あきらかに体調の突然の変化であり、ただちに保健室へ行きたい、ということであれば、それを「保健室レベル」と名付ける。
また、痛んだり、心配になったりもしているが、まだ保健室へ行くほどでもなく、とりあえず先生に報告したくなったけれども、授業を受けるのをやめて、保健室へ行かなくてはならない、というレベルではない、というくらいのものを、「教室レベル」と名付ける。
それを、本人が自己申告してください、というもの。
今日からそれを宣言した。
すると、2時間目の国語の時間中にやはり、
「先生!」
という。
わたしはにんまりして、
「保健室レベル?」
ときく。
彼女は、あっと思った表情になり、ううん、とかぶりをふって、そのまま漢字ドリルを続けたのである。
これまでの苦労がなんだったのか、というくらい、あっけなく解決。
彼女はそのまま休み時間も友達とあそび、なにごともなくその日を終えた。
おそらく、なにか安心・集中できないことがあって、自分の体調の方に関心がうつってしまったのだろう。
これをもっと改良して、教室の側面に、色画用紙を貼りつけた。
そこに、
「いたみレベル」
というグラフをはりつけた。
よくある、
「声の大きさレベル表」
をまねしたものである。
そこに、いたみ0(ゼロ)→とても元気 {笑顔}
などという絵と図が描いてある。
いたみ1→ふつう
いたみ2→ちょっとへんだけど、衣類調節、トイレ、水分補給でのりきる
いたみ3→今は教室ですごし、休み時間に先生へ報告
いたみ4→保健室へとりあえず行って相談してきたい
いたみ5→かなりへんだから、すぐに保健室へ行って手当を受けて休みたい。
いたみ6→きんきゅう事態。友達(や先生)の助けを借りて、すぐに保健室へ。
というレベル分けを、色別に描いた。
その後のクラス会議で、いたみ5のとき、6のときは、先生がいなくても、保健室へ行ってよいことになった。
また、授業中では、いたみ4にならないと、そのことをいちいち言わない、という約束もできた。
あまりはっきりとしていないし、レベル4なんかはかなりあいまいだ。
でも、人間の身体なんだから、弾力的な運用、ということでいいのではないか、と思う。
実際、子どもも、自分の身体の事ながら、あまりきちんと把握しているわけでないこともずいぶん多い。
でも、このレベル表があるだけで、授業中にいきなり保健室、という動きはかなり減った。
また、緊急時は自分だけでなく、まわりにそのことを言って、助けてもらえばいい、ということも確認できた。