叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

教室の中にオニヤンマが出現 その時教師は・・・


算数の授業中。
3桁の筆算、引き算をしていた。
位の部屋を黒板に書き、十の位からもらってきて・・・
とやってると、突然、子どもたちの大声。

「せんせー!でっかいトンボが!!」

見ると、本当に大きなオニヤンマの姿が目にうつった。
オニヤンマは、じっととびながら、少しずつ向きを変えているだけ。
子どもたちは、あまりの大きさに、目を見張っておどろいている。

それにしても、なんとおおきなとんぼだろう。
最初は、黒い鉛筆が飛んでいるのかと思った。
トンボ鉛筆、というのはここからきているのか?
大人の手のひらを広げたくらいある。

トンボはつぎつぎと位置を変えながら、教室を忙しく飛び回った。
そのつど、女の子も男の子も、キャーキャーいいながら、手をふったりノートをふりまわしたり。

トンボ一匹で、かんたんに授業は成り立たなくなる。

仕方なく、

「窓を開けよう!」
と言うと、
その声とぴったりかぶるように、

「せんせい!つかまえよう!」

と何人もの子どもたちの声がした。

わたしはトンボを外に出したかったが、ともかくも、子どもたちの前でポーズをとらねばならない。
つかまえるふりをして、うかつにも窓の外ににがしちまった、ということにしよう、と私はひそかに心の中で思った。

トンボは子どもたちの頭の高さから、わずかに高いくらいの低空をとんでいた。
わたしはバケツをもって移動し、とんぼをつかまえる、ふり、をした。

「せんせい!バケツじゃむりじゃない?」

それで、わたしは無言のまま、今度は買い物かご(よくスーパーにあるやつ。教室に、一個置いている)をもって、トンボの方へ向かった。

トンボが窓際をうろうろしているところに、わたしがのろのろとやる気なく近づき、そっとかごをかけると、なんと、あっけなく、かごの中に、トンボが入ってしまった。

「せんせー、すごい!!!かごでヤンマをつかまえた!」

クラス中が、いまやこれまでにもなかったような歓声で、私を称え始めた。わたしは、ひっこみがつかぬ。算数は中断したまま。

「せんせー、飼おう!」




わたしはその後、段ボールにカッターナイフで切り込みをいれ、ビニールをかぶせて簡易の飼育箱を作成。それを子どもたちはワイワイ言いながら応援し、飼育箱ができると、さっそくヤンマを箱にうつした。

算数の時間は、それで終わった。

次の時間は、オニヤンマの名前決め。

こんなはずじゃなかったのに・・・。