叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

運動会の前の語り


前記事において、運動会の前にインプットしておく語りがある、とした。
その語りについて、職場の同僚から尋ねられたので、書いておきます。


いよいよ、運動会がはじまります。
多くの人が来られます。
小学校全体の、大きなお祭りです。
みんなの成長した姿を、地域の方、ご家族の方、いろいろな方が見に来られる。

そのときに、一番大事なことがある。
それは、かけっこで一番になるだとか、綱引きで勝つとか、そういうことではない。
それは、大事な順番でいったら、3番目か4番目のことだ。

もっと大事なことがある。
ひとつめ。

負けたり、失敗したりしたときに、○○くんのせいだ!とか、○○さんがこうしたから負けたんだ!とか、こういうことを言う人がいる。

先生が、こういう言葉を聞いたときに、どんな気持ちになるか、分かりますか。

こういうことを言うチームは、ぜったいに強くならない。
負けるチームが、こういうことばっかり、言う。
なかの悪くなる、気分のがっかりするような、心が暗くなるようなことを言う人がいると、チームぜんぶが、きっとそうなる。そのチームのまわりの空気が、必ず、そうなっていく。くらーく、なっていく。
そうなると、チームの一人ひとり、本当の元気、本当の力がでてくるようになると思いますか。
ぜったいに出ない。だから負ける。とうぜんです。わかりきっている。これまでもずっと、そんなチームをよく見てきました。

○○くんがこうしたから、負けた!
遅くなったのは、○○くんのせいだ!

ぜったいに、負けます。
運動会、ちっとも楽しくない。
くらーくなる。
残念な気持ちだけがのこる。
言う人も、言われた人も、みんな暗くなる。
チームの全員が、楽しくない顔になる。
その顔のままで、運動会が終わる。
家に帰る時も、くらーい。
家に帰ってからも、くらーい。
家に帰って、おうちの人と運動会の話をするときも、くらーい。

へんなことを言う人が一人でもいれば、それを言う人も、聞いている人も、みんなこうなる。ざんねんな運動会になってしまいます。
一番くらくなる人はだれか、分かる?

(言った人)

そう。言った人が、一番大きなボリュームで聞くんだ。そうだよね。自分の言った、いやーな、暗ーい言葉は、自分の耳が一番よく聞こえる。自分の口から出てきた声が、一番近い、自分の耳に入る。(ここは身ぶり手ぶりで、耳や口を指で指しながら)・・・だから、言った人が一番、くらーい気持ちになる。


だから、○○くんのせいだ!とか、言わないのが本当です。

つぎ。

逆に、勝ったとき。

勝ったときに、「やったー」くらいならいい。
それだけでなく、「やーい、勝ったぞー。お前たちは弱いなあ。オレは一番だったぞー」
とか、勝負した相手に向かって、そういうよけいなことを言う人がいる。

自慢、という言葉を知っている?

(知ってる)

自慢をするのです。相手が闘ってくれて、それで勝ち負けを決めることができた。相手がいっしょに戦ってくれて、勝負をしてくれた。そのことを、ぜんぜん、わかっていません。その相手に向かって、勝手な、余計なことを言う。こういうのを、お子ちゃま、というのです。保育園にもどってほしいです。保育園でも、自慢なんてへんだ、とわかっている子がいっぱいいるよ。保育園でもそんな人来たら迷惑だと言われるかもしれんけど。

よろこぶのはいいです。
でも、それは、いい勝負ができた、自分たちの力がたくさん出せた、ということを喜ぶのです。それは、相手もいい力を出していたから、こっちも力を出せたのです。まだよちよち歩きの赤ん坊とすもうをとって勝って、うれしいですか?
勝つのが当たり前。そんなのじゃない。相手も同じ年代で、同じくらいの力で、それで戦って、いい勝負ができたことをよろこぶんです。
戦ってくれた、その相手を、「やーい弱い弱い」って。
そんなの、この小学校の運動会ではやらないでください。どうしてもやりたければ、どこかほかでやってください。そういう言葉を聞きたい人が集まったところを探して、そこで言ってください。この学校の運動会で、そういうことを言う人は、迷惑です。

だから、勝って喜んでもいいけど、よく力を出してくれて、いい競技ができた、今回はこっちが勝ったけど、次はどうなるかわからない。またいい勝負ができるように、またお互いにがんばろう、というのが本当です。そういう態度でいてください。そういう、堂々としたふるまいをするのが、勝った方の役割なんです。


大事なことを言いました。
このことをまもって、運動会を本当にいいものにしてください。自分の心が、「やってよかったなあ。思い切りやって、力を出して、気持ちいいなあ」そう思えるように、自分でしていくのです。

大丈夫。みんななら、できます。
ここまで練習してきたことを思い出せば、だいじょうぶ。
終わった後、みんなが笑顔で、「やった!」って顔になっているのが今からとても楽しみです。



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