叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

自分で何でも決めたがる子


委員会の担当のこと。
ふだんは低学年担任である。それが、毎週金曜日の1時間だけ、5,6年生を指導する。
委員会の時間になると、私の教室に、委員会の5,6年生が30人ほど、わんさかやってくる。

私は現在、図工主任。なぜか「新聞委員会」の顧問だ。

その委員会に、昨年教えた6年生がまじっていて、いろいろと話しかけてくる。多くは女子だ。

さて、いろいろと話しかけてくる女子の中に、「自分で何でも決めたがる子」がいる。
彼女は、ひとつひとつ、わたしの指示に文句をつける。

「そんなのおそいじゃん」
「めんどくさい、やめようよ」
「意味ない」

というような、とても否定的なニュアンスのことが多い。
まあ、教室には本当によくいる、よくある、高学年女子の典型的な子です。


ところが。この子が特殊なんです。
浮いているのです。
群れていない。・・・おかしいでしょう。女子で、群れていないなんて。

この子が浮いているのは、他にあまりなびく女子がいないからで、こういう子なら大抵は、グループを組み、その中の実力者にのしあがっているケースが多いと思う。
しかし、彼女の場合は、ずっと一匹オオカミを貫いている。

したがって、

「わけわからんし」
「意味わからん!」
「いちいち言わんといて」

などという言葉を吐いても、それを受けて、いっしょになって響いてくれる友達がいない。

そのため、結局、ぶつくさ文句を言いながらも、委員会の中でもけっこう動いてくれている。活動するし、5年生の面倒もよくみる(とにかく動かない5年生に注意してくれる)ので、なんだかとても不思議な子に見える。

(あれ。今、自分でやりたくねえとか言ってたよな。でも、5年生の前ではがんばってるよー。なんでだ???)

と思ってしまう。



○自分の掃除の場所を、勝手に変えてしまう。だれにも言わずに。(注意すると、うらめしそうに見る)
○給食当番をすっぽかす。(注意すると、うらめしそうに見る)
○保健室に勝手に入ってしまう。(養護教諭の留守で、入らないようにと扉に掲示があるのに関わらず)
○保健室に勝手に入って、授業時間になってももどらない。
○教室で、算数の時間なのに、勝手に漢字の練習帳に漢字を書き始める。(いやあ、おどろきました・・・まったくの指示無視です・・・)


これらを注意すると、うらめしそうな目つきで、わたしをにらみます。

下校時間になって帰宅を促した時、なかなか教室から出て行かないので注意すると、

「わたしのことなんてきらいなんだから、ほっとけば」

という。
これにも驚きましたな。

つまり、自分が勝手なことをしている、or 社会性を無視して集団生活とは相いれないことをしている、とは思ってないのと、それを私が注意するのは、私が彼女を嫌っているから、と誤解しているのだ。

いやあ、背筋に氷柱が立ったような、ちょっと緊張が走りました。



(この子、自分が勝手だ、ということ、自覚してない、というか、わかってないのかも・・・!)


そういえば、彼女は背が一番低く、背の順で並ぶと一番前になります。他の子をしきりたがるので、一番前なのを理由に、みんなに

「早く並んで!!」

とかなり強い口調で言うのが常でした。
さて、その彼女は、私が先に歩く場面があったとすると、私の歩行のスピードについてきたでしょうか。

ついてきません。
一年間に、そういうことは何度もあったはずなのに、いっしょに歩いた記憶がない。つまり、彼女は、自分のペースで、歩いた、のです。
私がいつもいつも、ちょっと歩いては止まって後ろをふりかえり、声をかけたり、する必要が常にありました。

男子の先頭の子は、私の歩くスピードに、ついてきていましたね。だからいつも、

「女子、いそげよ~」

と男子に言われていましたっけ。
(前を歩くことの方が少なく、私はほとんど、全員の後ろから歩くことが多いのですが、それでも年に何度かそういうことがあるたびに、思ったので強烈な印象として残っている)

彼女は、私のスピードに合わせる、ということができないのです。
私がスッスッと速く歩けたとしても、私に合わせよう、という気持ちはないから、いつも遅れるのです。それに、遅れてしまった、どうしよう、という考えすらない。

こんなふうに、学校での自分の行動について、決定権は自分が持っている、と思っています。


発達障害が疑われる子。
LDとラインはギリギリ、です。
いわゆる境界の子。

いや、しかし・・・。
自分の意見を決めるのは、この子の成長のあかしでもある。
だから、この子の、「決定権は私にある」という意識そのものがおかしいわけではない。

しかし、ここは学校だ。集団の場だ。
決定権が常に、いつもいつも、すべてあなたにあるわけじゃない。
先生が決める、ということだって、非常に多くある。
学校では、子どもたちのために大人が決めることが、存外たくさんある。
先生たちは、そのために、いろいろなことを決めている。
子どもが決めることになっていない、ということもたくさんある。

たとえば、先生がいつ何を言うか、指示を出すか。
これは、先生が決めます。

(なんだか当たり前すぎて、おかしな話になっていますが、これは、授業中、

「先生、今しゃべらんどいて」

という発言をする場合があるからでして・・・)


こういうことを、手間がかかるかもしれないが、細かく、細かく、一つひとつ、教えていくしかないのでは・・・。

決め台詞は、「あなたが勝手には決められないよ。先生がそれを決めるお仕事です。自分で勝手に決めたければ早く教員免許をとってね。(笑顔)」