叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

「折り合いをつける」・・・←これができる子

友達のことについて、不平不満を口にしない。
それが、Tくん。

口にしないだけで、本心はどうかな、と一年間ずっと関心をもって見てきたが、わたしの目には、どうやら彼の心にあるものは、「受容」だけだ、というふうに思える。

そのTくんは、発達障害の傾向があり、ADHDの診断も出た。
発達障害のことと、『不平不満が無い』ということが、どうリンクするのか、今の私には分からない。)

先日は、休み時間の過ごし方をどうするか、で相談していたら、見事に自分たちで「ちょうどよいおとしどころ」を探り当てて、みんなが満足するところで過ごそうとしていた。

「これは、大人が見習うべき態度ではあるまいか」


と、わたしはしばし、感心してうなってしまった。



Tくんは、まず、1時間目のトイレ休憩の5分休みに、Rくんに対して予約を入れます。

「Rくん、あとで2時間目休みにさ、本つくろ!」

彼は今、自作の絵本づくりに凝ってまして、一生懸命に作品を仕上げようとしている。

ところが、Rくんはそれを受けません。

「ううん。おれ、2時間目休みは、校庭で石さがすから」

と言って、断ります。

Tくんは何とかして、大好きなRくんの考えを変えるようにアクションを起こすのか?、と推測してみていたけれど、ちっともそんなことがなくて、Tくん、なんだか平気な感じ。

その後、今度は二番手のSくんのことを思い出した様子で、

後ろをふりかえって、

「Sくんは?2時間目休み、本つくる?俺と一緒にやる?」

と問いかけますと、Sくんはちょっと困ったように、

「え、オレ、Rくんといっしょに石探しに行く」

と断ったのでした。

Tくんは、さらに、

「あ、そう。じゃ、Yくーん!」

と、今度は三番手のYくんに目標を定めた。

「Yくーん、Yくん! 俺といっしょに本つくろ!」

すると、Yくんは読みかけの本から顔をあげて、

「・・・えー、図書室行くつもりだけど」

という。

今度こそ、残念がって、悔しがって、

「えーー!!!」

とか、大きな声を出すのかと思いきや、Tくんは、まったくそんな素振りを見せないのです。

Yくんの「図書室行くけど」を聞いて、Tくんは、静かに、

「ふーん。・・・おれ、今日は本つくるから」

と言って、そのまま自分の席に座ったのでした。






これ、なかなか!じゃないですか。

Tくんは、ちゃんと、自分がのぞむ休み時間の過ごし方を考えてるでしょう!?
一番希望の子から、順番に声をかけて・・・。
全員だめだったら、そうか、と納得(?)してるし。
自分だけでもやろう、というところで、ある意味では「アキラメ」ることもできるのです。


これ、子どもによっては、こうはならない。

「えー!!なんだよ~!」

と大声で悲観してみたり、

「昨日、いっしょにやるって言ったじゃんか!(怒)」

と卑怯にも以前の口約束を持ち出して、相手を脅しにかかる場合もありますね。

あるいは、

「ちぇ!!ぜんぜん、みんな俺といっしょにやってくれない!!」

と、これみよがしにつぶやして、同情を誘ったり、

「本当は本つくりたかったけど、俺も石探しに行くわ」

と、気持ち半分のところで、「見た目の折り合い」をつけたり、とするかもしれません。


ところが、彼の中身は、そういうのとは、異なっておりました。



結局、2時間目休みはどうしたかというと、

Tくんは、今までそれほど交流のなかった、インドア派の子たちとなんとなく一緒に本をつくって過ごしたのです。

すると面白いことに、、2時間目休みの、残り10分ほどのところで、RくんとSくんが、かなり早めに教室にもどってきまして、後半の10分はTくんといっしょになって、本のことで盛り上がっておりました。


ふたを開けてみたら


だれの意志も妨げられることがない。

<全員が納得して過ごす休み時間>になっておりました。



これ、やっぱ、Tくんだよね。


絵本づくりだいすき