叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

高学年の実行力というのは、時に、おそろしい

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夏休みが終わって、もうすぐ、2学期がはじまる。
この時期の教員は、

「ああ~、いよいよ怒涛の新学期だわ~」

とか、愚痴をこぼしているものの、内心はとても楽しみにしているのである。

最初の楽しみは、子どもたちの作品だ。
作文がとくに楽しみ。
どんな夏休みを過ごしてきたのか、子ども目線で語られるそれは、人間の不条理がコミカルに描かれていて、わたしの心をわしづかみにする。

読書感想文、防災ポスター、交通安全の標語、ヤクルトの空容器でつくられる動物たち・・・

どれも、子どもたちがかばんにごっそり持ってくる作品群が、わたしにはたまらない魅力に感じられる。




さて、先日私は、児童が通う学童保育の先生たちに挨拶をしに行った。
夏休みでもないと、のんびりとお話をする機会がないから、毎年の恒例となっている。
夏休み中の子どもたちの様子を聞いた上で、2学期をふまえ、あれこれと茶飲み話をする。


玄関から中にお邪魔すると、クラスのYさんがいて、目ざとく私を見つけ、

「あ、先生来た!」

と話しかけてきた。

「先生!わたし、映画見に行ったよ!」

最近何をやって過ごしていたのか、と訊いてみたら、映画へ行ったことを教えてくれた。


「それもねー、先生!」

ふだんからいろんな面白い話をする、愉快なYさん。
せっかく先生に会ったからには、さあ、面白ことを話すぞ、というような表情で、私に話してくれる。

「映画に行ったのがね、お父さんの会社の人たちと一緒にだったんだけど・・・」



Yさんのお父さんは地元の小さな会社の経営者。
自分の会社の若い人と共に、自分の娘もいっしょに映画館に連れて行った、という感じだったようだ。

よく話を聞いてみると、会社が建設関係なのか、若い男の人がたくさんいるようで、その中の数人が、今回、社長夫妻(つまりYさんのお父さんお母さん)と、その娘(Yさん)と、いっしょになって映画を見たのだった。

「でねえ」

Yさんは、持っている水筒の麦茶で喉をしめらせつつ、勢い込んでしゃべる。

「なんかねえ、お父さんの会社の人ってねえ、なんとか兄(にい)って呼ばれてるんだよね」

「兄(にい)?」

「そう。事務所のおばちゃんたちが、現場で働く人たちのことを、ゆう兄(にい)とか、まあ兄(にい)とかって呼ぶんだよね」

どんな業種なのか知らないが、どうやら家族的な雰囲気をとても大切にする、個人経営の会社なのだろうか。若い社員の男性を、たいへんに親しみを込めた感じで、

「○○兄(にい)」

と呼ぶのだそうだ。


「でねえ、先生。わたしが映画に行ったときに、お父さんが連れてきた男の人は、まあ兄(にい)って人だったんだよね。あと、ゆう兄(にい)もいたんだけど、お母さんがすごく受けてたのは、うちらがみんなで観た映画が、スタジオ・ジブリ思い出のマーニーだったんだよね。」

わたしは最初、ぴん、とこなかった。

「先生、分かんないの?つまり、うちらは<まあ兄>といっしょに『思い出のマーニー』を観たわけ」

「?」

「まあにいと、マーニーをみたの!」



ところが彼女は、そのダジャレのような出来事だけに関心があったわけではなかったようで、

「でさあ、わたしが不思議に思ったのは、なんでうちのお父さんの会社は、なんとかニイ、って人が、こんなにたくさんいるのかな、と思うわけよ」

彼女は、自分の父の会社の人間関係が気になっていて、これからそれを調べるつもりだ、と言った。

「先生、自由研究まだやってないけど、それでもいい?」

「それって?」

わたしがほんの少し不安を感じながら訊くと、彼女は口を尖らしながら、説明した。

「つまり、うちの会社で働いている人の名前ををぜんぶ調べて、その人がもし、○○兄(ニイ)って呼ばれているんだとしたら、その○○兄(ニイ)ってのを、全部しらべるの。そして、会社の受付の女の人たちに、いちばんかっこよくて、人気のある○○兄(ニイ)は誰か、とか・・・。大人の人とかって、そういうのがあるでしょ?」







そ・・・それだけは、やめてあげてください(泣)



もう、8月も下旬。
立秋、処暑を過ぎ、最後の追い込みです。
子どもたちの力が試されますねえ。

残りの宿題、目をギラギラさせて頑張る時期がやってきた!!

ただし、高学年の実行力というのは、時に、おそろしいものでもあります。
自由研究のテーマや内容は、身近な人が、気にして、確認してあげてくださいね。

さあ、全国の小学生、ガンバ!!


思いでの・・・