叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

「早く起きなさい」 と 「いつ起きる?」

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なかなか起きない子に、

「早く起きなさい!」

と言って起こしている、という話。


先日、学級の保護者会がありました。
夏休みが終了し、2学期始まってすぐの参観日。
授業参観終了後の、学級の保護者会で話題になったのは、夏休みボケを直す、というテーマ。

別に最初からねらってそういう話題になった訳ではなく、
保護者の方が一言ずつ、順番に話をしていくうちに、自然とそういう話題にうつっていったのですが・・・。

シャキッとしない子どもを見ていて、親はイライラするのです。
我慢ならず、命令口調でガンガンと発破をかけているのだけれど・・・。
子どもは、口をとがらし、ほおをふくらませて、ふてくされているだけ。
ちっとも親の期待通りにシャキッとしない。

どのお母さんも、お父さんも、

反抗期にさしかかっているのですから、まあ仕方がないけど・・・」

でも、まあ、親としてはネ・・・
言わずにおれないから、親子で喧嘩になるのを覚悟で、言うしかない。

「そうそう。起きないんだもの」
「そうでもしなけりゃ、ねえ・・・」
「うんうん・・・」


みんなで顔を見合わせて、うなずきあっていました。



そこでわたくしが、

「早く起きなさい」

ではなくて、

疑問文の、

「いつ起きるの?何分?」

とやさしく聞いてはどうでしょう、と言いますと、


ガハハハハーッ!
という失笑と共に、
○いや、そんなやさしく聞いたって、うちのガキは起きないですよ!

○無視されますよ、無視。

○親が何を言ったって、都合の悪いことは無視するんですから。


という、威勢の良いお母様方の意見がほとんど。

ガハハハ、と机をたたいて、自分の息子の悪口を言って笑うお母様たち。
まあまあ、と私はなだめるように、

「朝一番からの命令口調を、ほんの少し変えてみて、子どもの反応を知りたい、というように、どう?・・・とか・・・教えてよ・・・とか、というような雰囲気でもって、いつ起きる?と聞いてみてはいかがでしょうか」


これは雰囲気が伝わらないと、いけない、と思って、わたしが何度か声をかける雰囲気を演じて見せたところ、学級のお母さんたちは、爆笑であった。

「アハハハ・・・そんな、生易しいような起こし方で、起きるわけがないですよ、先生」

目の端に、涙をためて、笑いながら、そうおっしゃる。


でもネ。

命令口調で、起こそうとしても、起きるのは起きるけど、そのあとに、何分も、時には一時間近くも、親子で雰囲気悪く、言い合いをしたり、舌打ちをしたりしながら過ごすのでしょう?

それを考えたら、ちょっと一度、雰囲気を変えてみるのも、いいかもしれないですヨ。

遅刻したらどうする、というのが、心配なので、

大声で叱咤しながら!
脅迫的に起こすしか!
他に方法は無いのだよ、明智君!


と断言されるのでしょうけど・・・。





命令口調だと、子どもからしたらね、

「お前は、こうやって起こしてやらないと、起きない子なんだからね!」

という指導をされているような気になるんですよね。

ところが疑問文で、どう?って聞かれたら、

「お前は自分で起きる力はあるよね。あとは、今の時間を把握しているかどうかだね」

というように、ちょっと、親と子の、お互いに問題だとする焦点が、微妙に変わるのです。



自力で起きる能力そのものを疑うのではなく、現在時刻を把握しているかどうか、という点を焦点にした方が、はるかにいい。


そんな説明をしたら、納得したようで、

さっきの、机をバシバシ叩いてガハハハと笑い、息子の出来の悪さを盛んに吹聴していたお母様も、

「はあ、なるほど。じゃ、口調が先生みたいにやさしくなるかどうかは別にしても、ともかく命令口調はやめにしてみますわ」


と言っていただきました。

命令口調がなくなるだけで、なんか変わると思うなあ。
どうかなあ。
子どもによるのかなあ・・・。

いや、きっと、大人の意識の中に、

「子どもの気持ちや内面がどうのこうのと、見えないものに関心を向けるなんて、不毛だ」

という固いものがあるのであれば、同じなのかもしれないなあ・・・。


写真は、アリジゴク。
アリジゴクだ!