叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

大好きで大嫌いなお母さんのこと

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〇〇してくれない。
お母さんが。
ぼくに。


これは、腹が立つ。
だって、やってくれないんだもの。
こっちはこんなに願っているのに。

お母さん、こっちを振り向いてくれない。
関心を向けてくれない。
見てくれない。
やってくれない。


くれない。


どうして、やってくれないの?


こっちがこんなに叫んでいるのに、さびしくなっているのに。
どうして!




ちっくしょう。





このままでは、ぼくは、ズタズタのボロボロ、グズグズになってしまっていくのが分かる。

それを阻止するために。

自分を守るために。

どうしようか、考える。





添っていきたい、くっついていたい。
お母さんのイウコト、なんでも聞いていたい。

こっちが勝手に、一方的に、お母さんの関心を必要としている。


お母さんの声がいい。
お母さんの顔がいい。
お母さんに抱っこしてもらいたい。




しかし、しょせん、お母さんは、ぼくじゃあない。

相手を変えることは、所詮、できないこと。

相手は、相手の意志で動いている。

当たり前のこと。

なにかを願うのは自由だが、強制させることはできない。相手の心に鎖はかけられない。



お母さんが好きだ。

だから、

そのお母さん、今のお母さん、目の前のお母さんを。
丸ごと、受け止めたい。そんなお母さんに、沿っていきたい。

でも、心がそれを拒否する。拒否したくなる。相手を否定したくなる。

すると、お母さんを拒否する、と決めた途端に、暗闇のような、真っ黒な悲しみと寂しさが突き抜けるようにこみ上げて来て・・・

別のエネルギー、怒りとなる。

お母さんが悪いんだ、となる。




なぜ、そうなるか。

そもそも、添うことができなかったから。自分が。相手に。大好きなお母さんに。

お母さんが好きだ。
だけど・・・、受け入れられないんだ。
ぼくを大事にしてくれないお母さんのことを・・・。


いやだ、と思った瞬間、
気にいらない、と思った瞬間、
黒い霧のようなものが、ぶわっと、
ぼくの心におおいかぶさる。
そして、僕のこころからは、大好きなお母さんの顔が見えなくなる。

あとは、冷たい金属のような、まっ黒なさみしさで、いっぱいになる。

その淋しさに耐えきれないぼくは、すべて悪いのは、お母さんだ、と叫びたくなる。



僕は、期待する。

甘美でとろけるような何かを。



その一方で、身を固くして恐怖に備える。

そう、ならないことの失望に・・・。

だから、相手に、矢印を向ける。

相手を責める。




すぐに、

たしかな、しっぺ返しがくる。

真理の世界から、しっぺ返しがくる。

真っ黒な悲しみと寂しさが、自分を支配し始める。

だけど、そうせずにはいられない。
お母さんを拒否したくてたまらない。
ぼくは、許せないんだ。お母さんのこと。




どうして、やってくれないのか。

ぼくは、うんと、ほめてほしい。
すごいねって、言ってほしい。
拍手してほしい。
大事な子だよ、って、言ってほしい。


ところが、それをしてくれない。
やってくれない、相手が悪い。お母さんが悪い。


ぼくは、安心できない。
やってくれない、から。



心の底では、そんなお母さんを大好きでいたいはずなのに、心のどこかがそれを拒否する。
いっしょにいたくない、という矛盾した気持ちが出て来て、混乱する。
その混乱が受け止められなくて、大好きでいられなくなってしまった哀しみが抑え切れずに、爆発する。
「僕の本心と、今の気持ちの、この矛盾はどうしたことか!」

この矛盾、この混乱は、おかしいぞ!というサインだ。
自然界からの、緊急警報、サイレンだ。
「おい、おい! 本心と違うじゃないか!いったい、どうしたんだ!」
そういって、サイレンが鳴り響く。


そりゃそうだよね。
心の一番底、本心っていうのは、本当の、ゴマカシのない気持ちのことだもの。


この、怒りの感情って、ほんとにすぐに湧いてくる。
あっという間、というよりも、相手に矢印を向けたその瞬間に、ほぼ機械的なくらい正確に、自分自身に跳ね返ってくる。
つまり、これは、容赦なしに、ということ。
ぼくのやってることは、まちがっている!っていうこと。

もともと、自然は一つだから・・・、なのかもしれないな。
相手と自分も・・・。
人間の本性は、人どうしの心の分裂を望まないのかも。




ぼくは迷う。


人が人とともにいたい、人を好きでいたいと願うのは、なぜなのか。

そうしないと、厳しい世の中を生きぬいていけないから、なのか?

自分の外面と内面、自分の身を守るために、そうするの?


なぜ、ぼくはお母さんが好きなんかな。

ぼくを嫌うお母さんであっても、本当は好きなんだ。

だから、ぼくを嫌いでも、いいんだ。

許してあげたいんだ。

本当の本当の、本当の本心ではね。

だけどそれができないから、苦しんでるってこと。
怒っているのは、そういった姿なんだってこと。

ぼくは、怒りながら、泣いているんだった。

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