【卒業前日】子どもたちに囲まれる
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卒業式の前日。
急に配らなければならなくなった学校からのプリントがあるとかで、急いで職員室に取りに行ったり、熱が出て大事をとって休んだ子の親から連絡があったり、とても慌ただしい。
「先生、ちょっと10分だけ、時間をください」
終業式が終わり、このあと、明日の卒業式に向けての全校練習もある。
いそがしいな、と思っていた矢先。
とつぜん、ある子が10分だけ時間をください、と言いに来た。
「え?時間がほしい?」
「はい。10分だけ。わたしたちに時間をください」
「あ、そう・・・」
なんだろう?と思う。
みんなで、最後の歌の練習がしたいのかなあ。
じゃ、10分は長いから5分だけね。
「やった」
リーダーが、大きな声を出した。
「みんな、集まって!」
子どもたちがわたしの周りを取り囲んだ。
なにかのゲーム?
なんか、おもしろいこと考えたの?
すると、どうやら用意していたらしい音楽が、CDから流れる。
みると、CDデッキの前にはWくんがいて、リーダーから指示を受けてスイッチを押したと見える。
なんだ、なんだ?
なんだか懐かしいような曲が流れ始めて、よびかけが始まった。
至近距離で、子どもたちがわたしの目を見て、話しかけるように語り始めた。
「先生へ」
「1年間、あらま先生に、本当にお世話になりました」
「新間先生は、とくいなことがたくさんあります」
「いそがしいときでも、生活日記に書いてくれます」
「まじめだけど面白くて、教科書にはないことを教えてくれます」
「とても生徒思いの、やさしい先生です」
紙をもっていたらしく、めいめいがメモのような紙を見ている。
つぎは誰々だよ、と小声で指示している子もいる。
「ひとりもひいきしたりすることもないし」
「みんなが考えるように、といつも私たちに考えさせてくれました」
「みんなのことがよく分かっていて、いつも話をきいてくれました」
このあたりから、不思議なことに目頭が熱くなり、熱い液体が目から気持ちよく流れ始めた。
ハンカチはどこだ、とポケットを探していると、その様子がおかしかったようで、なんとなく笑い声が起きる。
「先生の授業は、いつもとても面白かったです」
「ぼくは、苦手だったけど、算数が好きになりました」
「全員を大切にしてくれました」
このあたりから、なにを言ってくれたのか、よく覚えていない。
感じていたのは、涙というのは、勝手に出てくるものだ、ということ。
それから、涙は熱い、ということ。
熱い涙は、流しているのがとても心地が良い、ということ。
わたしはずっと目を押さえて、立っていた。
ハンカチを外してみると、わたしをぐるりと取り囲んでいる子どもたち。
なんだかとても不思議な光景だった。
「先生へ」
当番のような子が出て来て、ふくろをくれた。
「ありがとう」
かねてから用意していたような、メッセージカード集。
そして、ティッシュボックス。
「先生のティッシュをみんなでけっこう使っちゃったから、これはお返しです。ありがとうございました」
「あ、そう」
言葉が、ちっとも出てこない。泣けてきて、困る。
泣きながら、なんでこんなに泣けてきたんだろう、と思う。
たぶん、教員は、孤独だからだ。
わたしには、こんなブログで日々の思いをつぶやくくらいしか、自分を出せる手段がない。
職員室には、本当に語り合える相手はいない。
本当に思っていることは、ぼほ確実に誤解をまねくので、声に出して言うことはできないと思う。
この世でも、限られたほんの何人かにしか、わたしが本当に思っていることを言うことはない。
幾重にも囲まれた城壁を超えようとするようなもので、とうてい理解もしてもらえない。通じない。
そう思ってきた。
しかし、子どもたちはどうか!
大人には通じなくても。
子どもたちには、ほんのちょびっとでも、通じていたと言えるんじゃない?
甘いことは分かっているけど、少しそう思ってもいいんじゃないか、と思ったので。
だから、涙が出たんだと思う。
「あらま先生は最高の先生です!!ありがとうございました」
叱らないでも、いいですか。
そろそろ、次のステージへ、行ってもいいですか?
卒業式の前日。
急に配らなければならなくなった学校からのプリントがあるとかで、急いで職員室に取りに行ったり、熱が出て大事をとって休んだ子の親から連絡があったり、とても慌ただしい。
「先生、ちょっと10分だけ、時間をください」
終業式が終わり、このあと、明日の卒業式に向けての全校練習もある。
いそがしいな、と思っていた矢先。
とつぜん、ある子が10分だけ時間をください、と言いに来た。
「え?時間がほしい?」
「はい。10分だけ。わたしたちに時間をください」
「あ、そう・・・」
なんだろう?と思う。
みんなで、最後の歌の練習がしたいのかなあ。
じゃ、10分は長いから5分だけね。
「やった」
リーダーが、大きな声を出した。
「みんな、集まって!」
子どもたちがわたしの周りを取り囲んだ。
なにかのゲーム?
なんか、おもしろいこと考えたの?
すると、どうやら用意していたらしい音楽が、CDから流れる。
みると、CDデッキの前にはWくんがいて、リーダーから指示を受けてスイッチを押したと見える。
なんだ、なんだ?
なんだか懐かしいような曲が流れ始めて、よびかけが始まった。
至近距離で、子どもたちがわたしの目を見て、話しかけるように語り始めた。
「先生へ」
「1年間、あらま先生に、本当にお世話になりました」
「新間先生は、とくいなことがたくさんあります」
「いそがしいときでも、生活日記に書いてくれます」
「まじめだけど面白くて、教科書にはないことを教えてくれます」
「とても生徒思いの、やさしい先生です」
紙をもっていたらしく、めいめいがメモのような紙を見ている。
つぎは誰々だよ、と小声で指示している子もいる。
「ひとりもひいきしたりすることもないし」
「みんなが考えるように、といつも私たちに考えさせてくれました」
「みんなのことがよく分かっていて、いつも話をきいてくれました」
このあたりから、不思議なことに目頭が熱くなり、熱い液体が目から気持ちよく流れ始めた。
ハンカチはどこだ、とポケットを探していると、その様子がおかしかったようで、なんとなく笑い声が起きる。
「先生の授業は、いつもとても面白かったです」
「ぼくは、苦手だったけど、算数が好きになりました」
「全員を大切にしてくれました」
このあたりから、なにを言ってくれたのか、よく覚えていない。
感じていたのは、涙というのは、勝手に出てくるものだ、ということ。
それから、涙は熱い、ということ。
熱い涙は、流しているのがとても心地が良い、ということ。
わたしはずっと目を押さえて、立っていた。
ハンカチを外してみると、わたしをぐるりと取り囲んでいる子どもたち。
なんだかとても不思議な光景だった。
「先生へ」
当番のような子が出て来て、ふくろをくれた。
「ありがとう」
かねてから用意していたような、メッセージカード集。
そして、ティッシュボックス。
「先生のティッシュをみんなでけっこう使っちゃったから、これはお返しです。ありがとうございました」
「あ、そう」
言葉が、ちっとも出てこない。泣けてきて、困る。
泣きながら、なんでこんなに泣けてきたんだろう、と思う。
たぶん、教員は、孤独だからだ。
わたしには、こんなブログで日々の思いをつぶやくくらいしか、自分を出せる手段がない。
職員室には、本当に語り合える相手はいない。
本当に思っていることは、ぼほ確実に誤解をまねくので、声に出して言うことはできないと思う。
この世でも、限られたほんの何人かにしか、わたしが本当に思っていることを言うことはない。
幾重にも囲まれた城壁を超えようとするようなもので、とうてい理解もしてもらえない。通じない。
そう思ってきた。
しかし、子どもたちはどうか!
大人には通じなくても。
子どもたちには、ほんのちょびっとでも、通じていたと言えるんじゃない?
甘いことは分かっているけど、少しそう思ってもいいんじゃないか、と思ったので。
だから、涙が出たんだと思う。
「あらま先生は最高の先生です!!ありがとうございました」
叱らないでも、いいですか。
そろそろ、次のステージへ、行ってもいいですか?