叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

つらいことに耐えるとき 映画コクリコ坂から


ひさしぶりに映画を見てきた。
宮崎駿さんプロデュースの「コクリコ坂から」だ。

映画館はわりと空いていた。
他のお客さんはみんな、ハリーポッターとか、他の映画に流れていたよう。
でも、コクリコ坂のシアターも、開演時刻にはいっぱいになった。

この中で、主人公の海さんが出生のひみつを知り、つらさに耐えるシーンが出てくる。

海さんは、朝、ふとんから起きてくる。
前の晩からずっと泣いていたのだから、起きてこられないのかと思った。

でも、海は起きる。
そして、身体がうごくとおりに、しっかりとふだんどおりの生活をする。

これが、海の強さだろう、と思った。
心がどんな状況でも、
朝、やることがある。
朝、行動できる自分がいる。

頭の中はかき乱されていても、手と足と身体は、きちんと毎日の落ちついた、自分自身のくらしを、営みを、つくろうとしている。支えようとしている。

これを、強さといわずしてなんといおうか。



うつ病で苦しむひとも多い。
不登校で昼夜が逆転する子もいる。

なにかと生きにくい現代社会。
その中には、毎朝、起きるのが当たり前だ、ということを、なんとかやりこなそうとしている人もいる。

精神が追い込まれたとき、立ちあがれなくなることだってある。
朝、起きてくることができないこともある。
ただひたすら横になって、頭の中に去来する様々な印象とたたかっているだけで、せいいっぱいの人もいる。

海は、起きる。
そして、台所に行く。
お釜をのぞく。
米が前の晩から、水にひたしてある。
それを確認し、火をつける。

すぐにコップに水を汲む。
父の写真の前に、それを置く。
花に、水をやる。

そして・・・


大切な、幼いころから続けてきた、かけがえのない儀式、国際信号旗を揚げる。

このとき、海の心は落ち着きをとりもどしているかのよう。
表情は、かすかに、晴れかけている。

海はつよい。
海は、いつもどおり身体をうごかすことで、自らの心を、「いつもどおり」に、起動していく。


この朝のシーンが、もっとも印象に残った。
なんともすがすがしい、そして力強い、日本人の強さを見る思いがした。