叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

国際的な学習到達度調査(PISA)で日本上位

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たまにはまじめに、教育関係のニュースを。

ご存知でしたか?
2012年に、国際学力調査というものがあり、日本はほとんどトップになりました。
ほとんど、というのは、上位に、

シンガポール
上海
香港

という国だか都市だか分からない地域が入っているからです。
この国だか都市だか分からない地域が上位3位でして、日本は4位ね。

なんでか、このOECDという組織のデータには、国ではなく、

上海
香港

という、日本で言えば大都市東京のような地域名が入っているのだ。
日本も、東京、という一都市だけで競争すれば、1位の可能性が高い。

日本は、北海道から沖縄、離島までを含めたトータルの数字。
上海やシンガポールの規模や教育環境は、ほとんど日本で言えば、東京23区だけ、という感じですからね。


さて、今、日本に、世界中の教育関係者が集まってきている。
夏休みだから、日本の教員が空いているのをいいことに、世界中から見に来ている。
そして、日本の教員に、授業をやってみせろ、とリクエストしているらしい。


ところで・・・。

いわゆる「ゆとり世代」は、2002年度に始まった学習指導要領で育った世代(1987年4月2日生まれ~)。
彼らは侮蔑的なニュアンスを込めて「ゆとり世代」と呼ばれることもありました。(過去形)

2002年にいわゆるゆとり教育が始まり、2003年のPISAで学力が『世界トップレベルとはいえない』とされました。これはPISAショックとよばれ、マスコミが大々的に報道したので、世論も沸騰しましたね。
とくにこれまで黙っていた学習塾や進学大手の関係者が、

「それみたことか!」

と、広告を盛んに打ち始めたのを、ご記憶されている方も多いでしょう。

実は、この2003年のPISAを受けた子どもたちは、ゆとり教育を受けてこなかったのですが、にも拘わらず、学力低下の結果が、ゆとり教育のせいにされてしまった。

当時、円周率が3になった、という「虚偽」のニュースが流れて衝撃が走りました。
こぞってマスコミがこの嘘を面白おかしくニュースで取り上げたため、「学力低下」のニュースは、ゆとり教育のせいになったのでした。

マスコミを信じる人が多かったせいもあるが、こうした事実を整理して、きちんと提示しなかった教育関係者の動きも鈍かった。
当時の教育者たちは、何か反論的なことを言えば、

「だって、低下したじゃないか!」

と一喝され、何を言っても相手にされなかったらしい。(←研修で大学の先生が愚痴ってました)

もう一度整理しましょう。
ゆとり教育ではなく、いわゆるこれまで通りの詰め込み教育を受けてきた子たちが、2002年の1年間だけゆとり教育(というか、移行措置だったからほとんどゆとり教育とは無縁だった)の影響を受けたところ、PISAの点数が悪かった。ゆとり教育を受けてこなかった子どもたちの「学力低下」だったのに、ゆとりのせいにされたのです。

さて、2012年は国際的な学力調査の当たり年でありました。
PISAをはじめ、国際成人力調査(PIAAC:ピアック)でも、日本はほぼ、世界一になってしまった。

実は、「脱ゆとり」は現場にきちんと降りてくるまでに約10年かかりました。
2002年に指導要領が改訂されてから、その改訂の意味をきちんと把握し、ゆとりを脱出する、という体制になるまでに、何年もかかっている。
国の統括的な立場の役人が、声をからして「ゆとり脱出」を全国の自治体や県の教育研究レベルで説いて回るのに1、2年。全国の教育委員会が研修の場で、数パーセントの指導的な役割を果たす教師に、「ゆとり脱出」を解く講義をして回るのにそこからまた1,2年。先駆的な先生方がその意味を理解して、現場で紹介したり、授業の工夫を現場に根付かせるにはさらにまた、2~3年がかかる。トータルすると、現場の教師が本当の意味で、「ゆとり脱出」を合言葉に頑張ったのは、10年後。つまり、本当にゆとり脱出といえるのは、つい先日のことだ。

それまでの10年間は、逆に、ようやく定着したゆとり教育の意味を理解した先生方が、必死になってその「生きる力」を育てようとしだして、動き始めた期間だったのです。

だとすると、この2012年のPISAの結果が、ゆとり教育のおかげなのか、それとも、ゆとり教育を脱したおかげなのか、どちらなのか、しっかりと見極める必要がありますよね。

実は、

2002年時点での学力低下は、「ゆとり」のせい、ではないし、
2012年時点での学力向上は、「ゆとり」のおかげ、なのであります。



これは文科省関係の立場の方も、明言している事実である。以下↓。

OECD国際学力調査は2000年に始まりました。これは高校1年生の4月に受けるものです。2012年にこの調査を受けた子は、2003年に小学校に入学した子どもです。2003年の時点ではゆとり教育が導入されており、そして完全に「脱ゆとり」が始まったと言えるのが2011年ごろからなので、彼らは小学校1年生から中学2年生まで、ゆとり教育のなかで育った世代です。その彼らが受けたテストで、日本は順位が向上したのです。




しかしこのことが、まったく報道されていないのは、当の文科大臣が、

「学力向上は、脱ゆとりのせいです」

とマスコミに語ったからですね。



だって、ゆとり教育受けてた子たちの成績が良かったなんて言ったら、進学塾も教育大手の会社も私立の中学高校もみんな、詰め込みをやめて、もう一度、「ゆとりってなに」って、やりなおすことになっちゃうから。

これから、「ゆとり」という言葉は、侮蔑的なニュアンスから、やっぱり大事なんだ、というニュアンスに代わっていくと思う。現場では。(現場の先生たちも、実はこのこと知っていて、「成績上がった子たちって、ゆとりの子たちですよねえ?新聞の論調って、なんでこうなの?」と言ってる。)


※下記は、たまたま見つけたUSAのデータ。日本は4位付近を見てね。
ゆとりの真価とは