叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

スプラトゥーンが結ぶ縁

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どのクラスにも、愛嬌ある、小さなマスコットのような男の子がいるものだ。

失敗しても、へっちゃら。
周りのみんなが笑っても、いっしょになって自分のことを笑っちゃう。

堂々として、思ったことを言う。
誰かれとなく話しかけ、好かれている。

で、つい、とんちんかんなことを言ってしまう。
字はとんでもなく大きく、忘れ物の常習犯で、消しゴムをしょっちゅう落とす。
一部の世話好きの女子たちから、いつもなんとなく面倒をみてもらい、全校集会のたびにきちんと並んでるかな、と心配されている。

うちのクラスでは、くりくり頭のDくんがそうだ。



またべつに、

どのクラスにも、落ち着いた、風格のある女子がいるものだ。
休み時間は、しずかに読書をしていたり、いち早く次の授業の準備を整えたりしている。
クラスで一番字がきれい。大人のような、しっかりした字を書く。

明日の準備は常々怠りなく、授業中のノートも、キーワードをうまく使って丁寧にそつなくまとめる。

うちのクラスでは、Aさんがそうだ。
彼女の祖母は、裏千家の師範で教室を開いている。



さて、どういう神の計らいなのか、この2人が今、隣同士に座っている。
精神的な年齢差をはじめ、ふだんの言動や態度、何から何まですべてがかけ離れているという2人。見ていて、少し心配になる。


授業中に何かを相談するように指示を出すと、まずDくんが、嬉しそうにほぼ身体を横に向けて、Aさんに話しかける。
Aさんは、坊主頭のDくんが、やたらと調子よく話してくるので、相手をしなければと思いつつも、困惑気味な表情を浮かべている。
私から見ると、小さな小鳥がサイのツノにとまってピーピーとさえずっているようで、Aくん相手に目をパチパチさせて困惑するAさんが気の毒になる。ついにAさんはほとんどしゃべらず、小鳥が最後までさえずったまま、相談タイムは終わるのだ。


わたしは、気の毒に思い、次の席替えのタイミングを少し早めてやろう、と思った。
そして、Aさんは今度はだれか、おとなしくて賢い男の子と隣になればいいのにな、と思っていた。

きっと、ここまでこの文を読んだ方の多くも、そう思うだろう。






ところが、である。

Aさんのお母様と話す機会があり、お母様が笑いをこらえてお話されたところによると・・・


なんと、Aさんは、DくんといっしょにWiiのゲームをしているんだって・・・マジか?




きっかけは、Dくんが、Aさんに、

「ゲーム、なに持ってる?」

と聞いたことらしい。

「Wii-U」

とAさんが答えると、「おれも!」と話が合い、

スプラトゥーンもってる?」

「うん」


そこでDくんがAさんにフレンド申請をして、インターネット通信が互いにできるようになると、、

「ねえねえ、今日、同じ時間にAちゃんもログインしててね」

と、Dくんが頼むようになったんだそうである。



Aさんも、ふだんはまったくそんなそぶりを見せないのだが、

「今日は、4時45分にDくんと約束してた!」

と急いで帰ってきて、時間を見ながら、Wiiのスイッチを入れているのだそうだ。

お母様が、もうおかしくてならない、というようにして、私に教えてくれた。




へえ・・・

あの、クラスで一番おとなしいAさんが、ねエ・・・。
Dくんとそんなふうに付き合ってたなんて・・・。



衝撃であるけど、なんだか微笑ましい。



ま、DくんやAさんのような子を、素直、と呼ぶのだろうネ。


ウスバシロ