叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

うさぎを飼う 教師の目




うさぎの世話にかかわることで、どんな力をのばしてほしいか。

1→「加減」「やわらかさ」「ていねいさ」「そっと」というニュアンスを知ってほしい。

つい乱暴に手を動かしてしまう子、ていねいにやる、ということよりも、すばやくやる、という意識が強いのか、ノートを扱うのもえんぴつを扱うのも、雑になってしまう子がいる。宿題にも根気が続かず、途中でいい加減な答えを書いて間に合わせようとしてしまう。根気がないのが問題なのか、それとも・・・。
自分の身体をコントロールしようとする意志を高めたい。
うさぎは、乱暴には扱えない。うさぎは生き物。雑に扱うことはできない。
「そっと」ということ、大事に、ということ。ていねいに扱う、ということを覚えてほしい。

まずは「そっと」ができるようになり、やがて・・・。

「ふわっと」
「ゆっくり」
「やさしく」
「しずかに」


2→「大事」「ひとつしかないいのち」を感じてほしい。

手を抜けない。ほうっておけない。他のことをおいてでも、大事にしなければならないもの。

それがいのち。
そのいのちの貴重さ、大事さ、ひとつしかない、というかけがえのなさを感じてほしい。
うさぎの気持ちを想像する、基礎となる認識。
「いま」、「ここ」で、「この」うさぎの命を感じて、なにができるか。
うさぎのいのちに向けて、自分の気持ちを焦点化させる心の動き。その先に、自分中心をのりこえた、相手の気持ちをくみとる心の芽を・・・。


3→「いっしょに」やることが楽しい、と味わってほしい。

うさぎを媒介にして、ひとりだけでなく、友達と関わることの楽しみを知ってほしい。うさぎの世話を共にやり、いっしょにやる友達と会話し、うさぎのことで話をしてほしい。
道具を貸し借りする場面や、えさをどちらがどれだけやるか、の相談をしながら、順番をゆずりあったり、方法を工夫する知恵を出し合ったり、道具を交代で使ったりする体験を積んでほしい。


4→世話をする者は、抱くことができる。

世話をするときには相手まかせ。遊んだり抱いたりするときやつかまえるときなど、自分がおもしろい、と感じるときにだけしゃしゃり出てくる。
自分がやりたいことはやるが、きらいなことはやらない。さぼろうとする。
その癖をできるだけ軽減させていくために、世話をする、責任を果たす者だけが、うさぎを抱くことができる、という社会の掟を(きびしいかもしれないが)知ってほしい。


5→「貸して」が魔法の言葉ではないことに気づく。

自分がもってきたキャベツ。いつも○○くんに「貸して」と言われて半分(ときにはそれ以上)とられてしまう。
自分がうさぎにあげたいのなら、きちんと用意をして来ればいい。
○○くんは、自分では用意をしないのに、「貸して」といいながら、もう手がのびて、キャベツをとりはじめている。
貸す、貸さない、あげる、あげないの決定権は、もらう側にあるのではなく、相手にある。もしくは「話し合い」の中で決まる。貸す立場、相手にも、意思がある、ということに気づいてほしい。
「貸して」「ちょうだい」は、命令ではない。


6→うさぎの行動を決めるのは、うさぎ。

あるうさぎに、別のうさぎがかまれたから、といって、噛んだうさぎをこらしめようとする。
うさぎが病気になると、「なんで病気になったんだ!」とわめく。
うさぎが小屋から出ない。あるいは、思いもかけない場所から逃げた。
うさぎは、思い通りにはならない。
うさぎの行動は、うさぎが決める。
うさぎの行動の決定権は自分にあると思っている?
「あのうさぎ、ウザい!」
だから、思い通りに動かないと怒る。
うさぎからしたら、きみの声がウザいだろうね。
そのことに、気付く。


7→ずっとうさぎ小屋の前にいたい。でも授業が始まるよ。

学校は、スケジュールがある。
ずっとうさぎを見ていたいけれど、そうとばかりもいかない。
ざんねん。仕方がない。
心をすっきりと切り替えて、次の授業や、掃除のしたくにとりかかろう。
切り替えること、あきらめることを覚えてほしい。
こんどね。またね。次の当番の日が、また楽しみだよね。


8→自分がそう考えた、行動した理由(わけ)を話せるように。

友達といっしょに仕事をしていて感じたこと。
おしえてほしい、と思ったこと。
どうして?と問われたときに、~だから、こう考えた、と言えるように。
理由を話せるようになると、一気に話し合いのレベルが進む。


9→うさぎに名前を付けることを通して、「名前」の大切さを知ってほしい。

友達にも名前がある。学級にも名前がある。
だれにだって名前があり、名前を呼んでほしい、知ってほしいと願っている。
さみしさは、「名前」を呼んでくれる人がいれば、こらえられる。
その人に近づく、いちばん大事な手立てが、名前。
うさぎにも。


10→おどろかさない。その空間に入っていくときの・・・「おはようございます」
あいさつ。


教室に入る時、おはようございます。
なぜか?
「今から入りますよ。あやしいものではないですよ。仲間ですよ。仲良くしたいと思っていますよ」
集団に、スムーズに入っていくためのあいさつ。
おはようございます。
うさぎ小屋でも。


11→感謝の言葉。ありがとう。

こころをこめて、言えるか。
言ったことがあるか。
どうだろうか。もしかしたら、大人に言われたから言っているだけかも。
心から、ありがとう、といえる場面がもしうさぎの世話を通して、提供できれば。