叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

震災をきっかけに転職する




転職の相談を受ける。

わたしが複数回、転職をしているためだろう。



福島原発放射能が心配で、移住を考えている人がいる。
うちの家内の古い友人。
現住所は、千葉だ。

「フクシマが今、たいへんですが、静岡県浜岡原発も心配ですよ」
と言ってみたが、考えは変わらないようである。
家族で少々ツテのある、愛知県へ引っ越そうともくろんでいるのだとか。

一番の動機は何ですか、と尋ねると、

「子どもです。放射能がこわいので」

とのこと。
何でも地元の水道水から、基準値を超えた放射性ヨウ素が検出されたらしい。

「もう、千葉には住みたくない」

とは、奥さんの意見。


へええ、と驚いた。
こういう人も、いるのだなあ。

気持ちの元にあるのは、わが子への愛情、である。



同じように、フクシマ、東北、関東圏、首都圏からの疎開をもくろむ人がけっこういる。

問題は、家族内の意見調整だ。
旦那さんと奥さんと、それぞれの意見があり、合わない事だってある。
旦那さんとは当初、意見が合わなかった。が、最終的には奥さんの気持ちを受けた、という人もいる。


近所に越してこられた家族がいて、今回の震災が大きなきっかけになったとか。
ご主人は転職を視野に入れ、いろいろと悩まれたが、これからの人生航路、舵を切るタイミングと判断されたのだとか。


この方に、
「最初の会社に、何年お勤めでいらしたのですか」
と訊かれた。

「十年です」
というと、驚いている。

十年勤めた会社を辞めて、転職することそのものに、相当な勇気が要るものらしい。
もう、過ぎ去ってしまった身であるから忘れてしまったが、当時の自分自身も相当、自分を鼓舞していたと思うし、気合を入れて計画を立てていたと思う。


だれしも、「転職する」ことに自信はない。
途中で嫌になってしまったらどうしよう、という不安だってある。


思えば、転職は不安だらけである。

1)離職する不安。家計の不安。(子育て中ならなお)
2)無事に就職できるか不安。失業の不安。
3)本当に新しい職業にマッチできるか不安。
4)続けられるかどうか、の不安。

どれも不安だらけ。
まともに考えたら、転職などリスクの高い賭けのようなもの。
周囲の人で、それを勧める人はめったに居ないだろう。
だから、転職の相談でわたしのところを訪れよう、というのだ。
(転職しようという人の背中を押せる人が少ないものね)





「それで、転職して先生になったのですか」

「すぐにはできなかったですね。その前に、教師になるためにやらなきゃいけないことがあったので・・・。免許がなかったもので」

まず最初の転職で、免許取得の勉強ができるようにと思って自宅から近くの勤務先を探して勤めたこと。
通勤が自転車こいで10分、だったこと。
その時間を勉強時間にあてたこと、などを話した。

その後、再度転職をして、教師になったことを話すと、

「なるほど、用意周到ですねえ」

と感心された。

用意周到というよりも、他に打つ手がなかったのだ。
追い詰められていた、という感じもあったから、むしろ背水の陣であった。



私のように、学生時代にこれといった世界が見えず、とりあえず就職した先でいろいろと人生経験を積み、そこから改めて道を定めた、という人も数多くいるだろう。
10年くらい経ってから、

「このまま行ってもいいけど・・・。もしかすると、○○がオレの本当の道かも」

と思うことだってあるのじゃないか。
とくに、これからの時代、キャリアはこれまでのような終身一企業就職、というような一階建てではなく、20代、30代、40代とそれぞれのステージでの就職を考えるようになっていくかもしれない。そうなると、就職イメージは、これまでの一階建てでなく、二階建て、三階建て、というものになっていくだろう。



震災で、奥さんが引越しを希望する。
旦那さんも、結局はそれに同意して、引越しを前提に生涯設計をやりなおす。


奥さんは、家計のためにはともかくも働いて、給料を稼いでほしい、と思っている。
片や、旦那さんの方には、これを機会に、と考えてみると、実は前からやりたかった職業がある。
どうせ転職するのなら、思い切って自営の道に、と考えることだってできる。


私自身は、10年勤めた牧場で働くうちに、「教師」という方向が見定められてきて、

「教師になります!」

と言って行動したのだから、転職と言っても、なんだか夢を追っているようで楽しかった。

20代では、自分の就く職業を定めるときの、確固たる発想も勇気もなかった。
実社会で10年やってきて、ようやくそういう境地に立てたのである。そこから現在の職業に就いたのだから、回り道をずいぶんした。
でも、私には必要な回り道だった。


大学を卒業して、ふつうに就職活動をして企業に入社する人の中には、10年くらいするとなんだか違うセンサーが自分の中に育ってきて、「転職」を考える人も多いと思う。

結構、いいですよ。そういうの。


転職を、自信をもって勧めたい、です。