叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

「おんなこども」の文化

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疲労困憊。
夕方、急に思い立って温泉へ行きました。

湯船につかると、目の前にすごい背中が。
倶利伽羅紋々です。
心の中で、「おおおおおおーーーーー!」と声が出ました。
ひさしぶりに、こういうの見たなあ。

温泉の入り口にはでかい看板があり、
「入れ墨、タトゥーの方は入浴をご遠慮願います」
とある。

つまり、この入れ墨を持った年配の方は、「遠慮」などしなかった、ということらしい。


ごま塩頭に石鹸をつけて、勢いよく洗い、手際よく背中を洗う。

思わず、

「入れ墨、取れたりしないよな」

と見てましたが、入れ墨はきっちりと、あざやかな絵のまま、消えないのでありました。
いくらゴシゴシ洗ってもネ。



さて、この方を見ているうちに、自分が小学生だった頃を思い出した。
なぜかというに、わたしはちょいとした合宿気分が大好きで、
とくに必要もないのに近所の銭湯に通った時期があったのです。

母親は

「金がかかってしょうがない」

と渋っていましたがね。

銭湯の何とも言えない、のんびりまったりした近所界隈の雰囲気が好きでね。
わたしはよく友達をさそって、ジッチャンやバッチャンの集う、銭湯に行ってた。

すると、面白いことに、近所の爺ちゃんたちにまじって、やはり物凄い

「龍」

だとか

不動明王

だとかを見るときがあった。





小学校5年生のころだったと思う。

仲良しの山之内くんと、これまたのんびりとした感じで銭湯の湯につかっていると、
ガラッと威勢よく肩をそびやかせて、その<彫物>をもつおっちゃんが入ってきた。

「あっ」

山之内くんが先に反応した。
このおっさん、話しかけてくるんや。面倒やな、という感じ。

案の定、

「これ、坊主!!」

と、声をかけられた。

「おんし(おぬし)たちゃ、何年生や」


山之内君が目をきょときょとさせながら、

「ええーーーっ、ご、5年生」

というと、おっちゃんは、背中の薄鼠色をしたでかい鯉の彫り物をびかびかに光らせて手ぬぐいでこすりながら、

「うんら、五年生なんだったら、5分は我慢できるやな」

と、サウナ室の方をクイッと指でさして、行け、と命令した。


山之内くんとわたしは、内心とてもイヤだったけど、顔には出さずにサッと湯船から出て、サウナ室に入った。

山之内くんが扉を閉める際に、サウナ室の時計を指して

「おっちゃん、今から5分やな」

というと、

「いや、おっちゃんが入ってからや」

でかい鯉をつけた背中がぐらりと動いて、のっさのっさとサウナ室へ来る。



5分間、山之内くんもわたしも、わりと平気で耐えたので、おっちゃんはレベルを上げたくなったらしく、

「もう5分や」

山之内くんが

「えーーー」

というと、でかくいかつい声で、

「文句を云うな。ションベンたれ」

みたいなことを言われて、二人でもう苦しい顔を浮かべてハアハア言いながら、さらに5分耐えた。

「おっちゃん、もうダメや」

山之内君がもう泣きそうになってサウナ室の扉に手をかけると、

「ほんまにダメか!男のくせに!」

「あかんわ」

すると、

「ようし、よう頑張った!コーヒー牛乳おごったる!」


このとき、あまりにも早く山之内君が笑顔になって、まだサウナ室から出きっていないのに、

「ほんと!!」

と、嬉しそうにしてしまったため、

「あっ!!お前、まだ元気あるやないか!!」



第二ラウンドは、湯船に沈むやつ。

対戦するのは、わたしと山之内君。

山之内君はやけになってきたらしく、

「なんや、おっちゃんはしずまへんのか!」

と食ってかかったけど、

「当たり前や!お前らだけや!!」



結局、何度も湯船の中に頭を沈めて秒数を数え、潜水を5,6回やって、ようやく放免された。



脱衣場に上がると、やくざのおっちゃんは、約束通りにコーヒー牛乳を買ってくれた。

買う寸前に、

「コーヒーじゃなくて、フルーツがいい」

と山之内君が提案したけど、

「男だろ!」


というよく分からない理由で、フルーツ牛乳は却下。

「なんで男はコーヒーなん?」

帰り道に、山之内君がぶつくさ言ってたのが印象に残っている。



今、そのことを思い出しながら、

あのおっちゃん、暇だったんだなあ。

というのと、
ヤクザが子どもと関わる、ということの意味
というのを、なんとなく考えた。



ヤクザ、という徹底的に男尊女卑的な、女々しいものを避けて通る文化と、

徹底的にこれまた、「おんなこども」である、当の子どもの文化がぶつかると・・・。


これはね、見た目はヤクザの方がつよく見えるけど、
裸になるとね、

まあ、裸になってみると、入れ墨があるぶん、やっぱりヤクザの方が見かけは雰囲気がすごいけど、

わたしは今振り返ると、精神的には、山之内君の文化の方が、ヤクザを飲み込んでいた気がするね。

「なんで男だからコーヒーなんや。意味わからんわ」

と言う山之内君。

完全に、ヤクザよりも上でしょう。精神的には、ね。



 ↑ これ、いったい、なんだろうか・・・と思う。




アマゾンの原住民や縄文時代のご先祖さまたちのように、

やはり我々人間は、素直になれば、女系で生きる生物なんではないだろうか。

「おんなこども」の文化が、どう考えても、人間的であるような気がするんだよね。

男の文化、というのは、どうもうさんくさく、嘘っぽい。無理を隠している、という気がする。




教室は「男の文化」では、うまくいかない。

これがなぜなのかは、・・・まだ、よく分からない。

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