叱らないでも いいですか

「叱らないで、子どもに伝える・通じ合う」 小学校教師、『新間草海』の本音トークです。

【4年国語】一つの花

初発の感想をきく。

〇かわいそうな話だと思う。
〇ゆみ子がかわいそうだった。
〇戦争しているから、かわいそう。

みんな、口々に、かわいそう、という。

「あ、そう。この話、かわいそうな話だった?」
「うん」

そこで、最初の発問を考える。

「どんなふうに、物語を深く読んでいけるか・・・なにか、考える糸口は・・・」
「だれがいちばん、かわいそうか、は?」
「じゃ、そうしよう」

うちのクラスの、最初の学習問題は・・・

いちばんかわいそうなのは、だれ?


ゆみこ派
・まだ小さい子なのに、いろんなことをがまんしなきゃいけないから。
・最初に覚えたのが、ひとつだけ、だから、よっぽどがまんしているから。
・お父さんの顔を覚えていないから。

お母さん派
・お父さんが帰ってこないので、ひとりでゆみ子を育てていくことになるから。
・ぜんぶゆみ子にゆずってあげていて、自分はほとんど食べられないから。
・戦争中で、いろいろとたいへんそう。

最初は、ゆみ子派とお母さん派が多かったが、音読をくりかえすうちに
お父さん派もでてきた。

お父さん派
・戦争に行って自分が死ぬかもしれないから
・戦争に行くけど、家族をのこしていかなきゃいけないから、もう会えないかもしれないから
・ゆみ子に、なにか買ったりあげたりしてあげたいけど、コスモスくらいしかあげるものがなかったから

手をあげさせると、初日、2日目までは、お母さん派が多かったが、3日目からダントツでおとうさん派が増えた。

つぎに、考えてみたいところは・・・

お父さんがプラットフォームから汽車にのって戦地へ向かう場面。
なんだかしっくりこないところがあるけど、どう?


〇あるある。なんで、なにも言わずに行っちゃうのか、というところ。
〇それと、最後はゆみ子の顔をみると思うけど、そうでなく、花を見ながら出発しちゃうところ。

じゃ、2つめの学習問題は・・・

なぜ、お父さんは、一つの花をみつめながら出発したのだろう。



・ゆみ子を見てると、悲しすぎるから。
・特別なプレゼントだったから。
・この花は、お父さんの代わりだよ、忘れないでね、という思い。
・最後のプレゼントだったから、おれの代わりにゆみ子を守ってね、という思い。

共感できるのは、
「忘れないで」と、「守ってね」。
子どもたちは、どちらの意見も、共感できる、に手をあげた。

「これは、どっちかには決められないと思うな。どっちの思いも強くあったと思う」
「ぼくもそう思う」


「しかし、そもそも、なんで花なんだろう?花を大事にするんだよう、って渡したけど」
「花くらいしか、そこの場にはなかったから」
「生きている花だったから」
「ゆみ子に、似合うと思ったから」
「びんにさして、家にかざって、家の雰囲気を明るくしてほしかったから」
「プラットフォームのはしっぽに、忘れられたように咲いていたから、忘れちゃだめ、という気持ちに合ってた」
「花に、願いをたくしていると思う」

じゃ、3つめの学習問題は・・・

「お父さんがゆみ子に本当に大事にしてほしかったものはなにか」



・お父さんの愛情
・お父さんの記憶
・お父さんはゆみ子を愛しているよ、ということの証拠
・生きていく、ということ
・たったひとつの、いのち
・ゆみ子は死なないでね、ということ
・笑顔
・家族で幸せになっていくんだよ、ということ


とくに、3つめの発問では、
ふだんあまり発言しない子が、堂々と
「いのちだと思う。お父さんが願うのは、たったひとつ、生き残ってくれ、ということだと思う」
と、力強く発言していたのが印象的だった。


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